みなさんこんにちは!こんばんは!ケンマルです。
認知症の方について何回か触れてきましたが、今回は「認知症の方を落ち着かせる言葉かけ」について色々考えていきたいと思います。
認知症の人と私たちの記憶の違い
人の記憶って砂の搭に例えることが出来ると思います。
人は生まれてきてから体験や様々な知識を得てそれを記憶として積み上げていくことで、その人の人格などを形勢していると思います。
つまり、私たちはたくさんの記憶を体験や知識を通して自分の中に積み上げて搭を作っている状態だと思います。
しかし、認知症という病気にかかるとこの記憶の搭を積み上げてくことができなくなり、次第に砂の搭の上から砂が崩れ落ちていく状態になっています。
だから、認知症の方は新しく体験したこと(記銘力)などを直ぐに忘れてしまい、30年も40年も前の事を憶えていたりもします。
これは砂の搭が上かから(最新の出来事から)崩れていくので土台に近い古い記憶は残っている状態という訳ですね。
ですが 、認知症の人の言動には病気になる前のその人の生活の記憶やその人生の象徴的な部分 、言うなれば生きざまがあらわれます 。
認知症の人はこのように 、自分の記憶や知識が失われていく中を生きているといえます。
認知症の人には「説得」よりも「納得」してもらうことが大事
私が介護士の新人だった頃、先輩職員より「認知症の人(利用者)」は「私たち」とは住む世界が違うから、その人たちの世界観を受け入れて介護をするようにとよく言われました。
住む世界が違うと言葉で書くと結構御幣を招きそうですが、認知症の方は記憶の欠如から私たちとは違う見え方や感じ方をするという事です。
例えば入浴の為、利用者さんに声を掛けると「昨日お風呂に入ったから今はいいです。」「汚れてないからお風呂には入らない」と断られることがあると思います。
実際には先週入浴してからその後はしていないのに覚えておらず「昨日入浴した」と思い込んでしまっていたり、認知症の方の中には羞恥心が強く残る方もいらっしゃるので「人に裸を見られるのが嫌」「他人と一緒の風呂に入るのは恥ずかしい」などの思いから入浴を拒否する場合があります。
「昨日入浴した」という場合では、上でも書いた「住む世界が違う」という言葉が当てはまります。
これは、入浴したのが先週であることが記憶からすっぽりと抜け落ちた状態で、ご本人の中では「昨日入浴した」という「入浴したつもり」になっている状態です。
ここで介護職員が「昨日は入浴してませんよ?」や「今日は入浴日だから」とか「体が汚れているから」などの「説得」から声掛けに入ると「入浴した」と思い込んでいるためその利用者さんの世界を真っ向から否定するような声掛けをしてしまうと、気分を損ねたり拒否的な反応を示したりすることが多く見られると思います。
では、どう声掛けをするのか。これは実際に上手くいった一例なのですが
- 皮膚疾患があり常に体に掻痒感がある利用者さんの時には看護師に同席してもらって、「お風呂に入ってもらって体を洗ってからかゆみ止めの薬を塗りますね」と声掛けしたところ利用者さんは「かゆみが止まるなら」と入浴してもらえました。
これは、掻痒感が常にあるのでそれを解消するための手段として入浴を進めたという事と、高齢者の方って結構医者や看護師のいう事は素直に聞き入れてくれること多いのでこういった対応を試みてみました。 - また、ある利用者Aさんは普段から私たち介護職員にも気を使ってくださる方だったので、「昨日お風呂入ったから」と入浴したと思いこんで、次の日も入浴してもらうと私たち介護職員に負担を掛けると思い入浴を拒否されていました。
なので、その方には「他の利用者さんの為にお風呂に湯をはったんだけど、その方が具合が悪くなってお風呂に入れなくなって誰も入らないまま湯を抜くのはもったいないから是非入浴してもらえませんか?」と話したところ快く入ってもらえました。
また、羞恥心から入浴を拒否する場合なのどは声掛けの工夫と同時に環境の整備も重要となると思います。
入浴についてまとめた記事
一例でも上げたのですが、利用者さんに声かけする際に「入浴日だから入浴してほしい」「最終入浴日から少し時間が経っているから清潔保持のために入浴してほしい」というのは私たち介護士の思いであって利用者さんにその思いを「説得」という形で伝えてしまうより、利用者さんの世界観に合わせて「入浴することのメリット」を上手く伝達できる工夫をして「納得」してもらえることに注力したほうが認知症の利用者さんと上手く付き合えると思います。
嘘もテクニックの一つ
みなさんは、介護をするうえで認知症の利用者さんの対応をするときに「嘘」をつくことってないですか?
よく認知症の利用者さんに嘘をつくことはよくないといわれますが皆さんは「嘘」を利用して介護をすることに賛成派ですか?否定派ですか?
正直にいうと私も「嘘」をつくことは多々あります。例えば上文で上げた入浴の事例ですね。
2番目の例で「他の利用者さんの為にお風呂に湯をはったんだけど、その方が具合が悪くなったので入れなくなって誰も入らないまま湯を抜くのはもったいないから是非入浴してもらえませんか?」と利用者さんに声かけしました。
実際には入浴を断った利用者Aさんの入浴日だったので「他の利用者さんの為にお風呂に湯をはったんだけど、その方が具合が悪くなったので入れなくなって誰も入らないまま湯を抜くのはもったいないから」という嘘をついたわけですね。
「嘘」と聞くとなんとなくイメージが悪いのですが、認知症の「忘れる」という特性を上手に「嘘」を利用して利用者さんに「納得」してもらえる声掛けをし利用者さんの世界観を崩すことなく私たち介護士と「優しい関係」を築けるようする手段として使うのであれば「嘘」も必要な介護スキルだと私は思います。
ただ、利用者さんの尊厳や世界観を無視し傷つける「嘘」は決して使ってはいけないと思います。
実際に行った声掛けの例
- 夕方特に帰宅願望が強くなり「家に帰る」と訴える利用者さんの場合・・・この方は毎日ではないんですが、時折夕方になると「家に帰る」と訴えて落ち着かなくなることがありました。
その利用者さんは元気だったころ自営業でお店を持っていた為夕方になると店が忙しいという記憶が残っているようなのであらかじめご家族にそのお店の定休日を聞いておき「今日は〇曜日だからお店はお休みだってご家族が言ってましたよ。」とカレンダーを一緒に見ながら話すと「納得」され帰宅願望が治まっていました。 - ついさっき食事を召し上がった利用者さんが「ごはん食べてない!食べさせないつもりなの!?」と立腹されることがしばしば。
そこに「今ご飯食べたでしょ?」などと職員が言おうものなら導火線に火が付きます。
なので、利用者さんの世界ではご飯を食べていないことが正解なのでそこに合わせてこちらも「おかずに魚を焼いてたら焦がしちゃって作り直すから時間をください」や「炊飯器のスイッチ入れ忘れたから少しだけ待ってね」と言うとその場は「納得」して落ち着きます。
ただ、認知症は記銘力に障害が出るので少し時間が経つと同じことの繰り返しにはなるんですが、そこは根気よく付き合います。 - よく夜になると「子供を迎えに行かなくった」「子供がいないんだけどどうしよう」と不安になる利用者さんがいました。
可能であればご家族に電話を掛け声を聴いて頂けると落ち着くのですが、さすがに毎回電話をするわけにはいかないので内線で電話を掛けるふりをして他の職員に内線を掛け家族(子供)を演じてもらっていました。
これって案外バレないもので少し会話をしているうちに落ち着きを取り戻して眠りに着かれていました。
この他にもいくつか事例はあるのですがそれは次の機会に紹介したいと思います。
今回の認知症の利用者対応について思う事
今回は認知症の利用者さんが落ち着く声掛けの仕方について考えてみました。
私たち介護士が常に認知症の利用者さんに声かけするときは、追い詰めないこと・おどさないこと(不安にさせない)を大前提に上の項でも書いたように利用者さんの世界観に合わせて時には「嘘」というテクニックを使って優しい声掛けをすることが大事だと思います。
また、私を介護士として新人の頃育ててくれた先輩にこうも言われました。
「介護士は時には利用者の旦那さん奥さんになったり子供になったり、はたまた医者になったりと利用者さんが目の前にいる私たちが映る様々姿を演じる役者になる必要もあるんだよ」と。
最後まで読んで頂きありがとうございます。