みなさんこんにちは!こんばんは!ケンマルです。
ある本を読んでいてこんなことが書かれていました。
「日本の寝たきり老人は、ヨーロッパの8倍、アメリカの5倍といわれている」と・・・。
確かに、今私が働いている特養(従来型の古い施設)では自分で歩ける人は80名中6名しかいません。
それ以外方は移動に車いすが必要で自走出来る方はほとんどいません。
つかまり立ちができる方はトイレ誘導をしているのですが残る74名中20名くらいです。
残りの方はほぼ寝たきりといっていい程で、起居動作は全介助の方ばかりです。
冒頭にかいた「日本の寝たきり老人は、ヨーロッパの8倍、アメリカの5倍といわれている」というのも頷けるかもしれないと思いました。
日々介護をしていて思う事
今いる施設で働き始めてまだ3か月満たないのですが、常々感じていたことは転倒させない、怪我をさせないという名目で利用者さんを立たせない、歩かせない介護になっていることです。
そこには利用者さんの立ちたい・歩きたいと言う意思を尊重したり、そういった行動を起こす原因を探るのではなく、「転倒事故を起こさない、怪我をしないように」と言う介護側の思惑だけが優先されてしまい、結果利用者さんを車いすに座らせひざ掛けに紐を付け後ろで縛るという抑制にはしってしまっている現状です。
これでは自立支援とは程遠く、縛られることで尚BPSDが出るようになったり、私たち介護士たちに対し不信感を抱かせてしまい信頼関係が損なわれてスムーズに介護が出来なくなったりと負のスパイラルに陥ると思います。
BPSDについてはこちら
そして、利用者さんがなお落ち着かなくなるとその原因を利用者さん側のせいにして向精神薬を飲ませ結果、立ち上がることは無くなるもののADLの低下を招き速いペースで寝たきりになっている状態も否めません。
現に9月に入社したときに同時期に入居された利用者さんが帰宅願望が強く徘徊をするので手が付けられないと言う理由で車いすに抑制が始まり現在では歩くことが出来ないくらい下肢筋力が低下してしまっています。
もしかしたら、私の施設だけではなく従来型の特養ではこういった対応は現在では珍しくないのかもしれないのですが、以前勤めていたユニット型特養では決してこのような対応をしていなかったので色々とショックでした。
話はそれますが、20年以上前にハワイの介護施設の見学にいったことがあります。
そこではもちろん認知症の方や歩くことができず車いすで生活される方もいらっしゃいましたが、利用者さんの意思をとても尊重されていて、介護士は利用者さんの生活の一部として、困っているとのみを支援するという形でした。
また、凄く感じたのが日本の介護施設に入居されている利用者さんと大きく違う事が笑顔の多さでした。
ハワイの介護施設を見学した時は利用者さんがとてもアクティブで話声や笑い声もあちこちから聞こえてきて施設全体が明るい雰囲気なのが今でも忘れられません。
それに比べると日本の福祉施設では利用者さんは表情を変えず車いすや椅子に座って会話などがほとんど無く、とても暗い雰囲気だと思います。もちろん、アメリカ人と日本人では気質も違うし、日本人は控え目な方が多くおとなしいといった傾向もあるため、入所されている利用者さんが静かと言うこともあるかもしれません。
また、介護に携わる私たちの国民性の違いも大きく影響されているのかもしれません。
私たち日本人は外国の方からみると「やさしい、親切だ」というイメージをもたれているそうです。
確かに、今の職場では職員を見ていても人員不足で業務が火の車でも利用者さんにつらく当たる人はほぼいません(一部職員はいますけど・・・)
先ほど述べた立ち上がり利用者さんの対応についても、怪我をさせて辛い思いをさせたくないと利用者さんのためを思って尽くした介護の結果、そういった形をとっているんですよね。
決して、介護側が楽になるためでそういった対策をしてる訳ではないんです。
しかし、知らないうちにその人の自由を奪い生きる力や心を奪う結果に繋がっているのはこれほど悲しいことは無いと思います。
それではどうしたらいいのか? 福祉大国といわれているデンマークの介護を少し調べてみたのでまとめてみました。
成熟社会といわれるデンマークの介護
デンマークでは、1979〜1982年の間に、党派を超えた高齢者問題委員会が設置されています。この最後の年である1982年に、世界的に有名な「高齢者福祉の三原則」が打ち出されました。
「高齢者福祉の三原則」について少し触れたいと思います。
「高齢者福祉の三原則」
- 生活の継続性に関する原則
自分が今まで暮らしてきた生活を断続せずに、継続性をもって生活するという原則です。
歳をとっても介護施設で暮らすのではなく、住み慣れた自分の家で暮らし続けることを支援する原則となっており、“在宅介護”と密接に関わりあっています。 - 自己決定の原則
高齢者になり、介護が必要になると、様々な物事を家族や周囲の人間が決めてしまうことが多くあります。
しかし、自分がどのような状態となっても、生き方や暮らし方について自分で決めていくべきであるという考え方、それが自己決定の原則です。
つまり、高齢者の自己決定を尊重し、周りもそれを支えていくということを示しています。 - 残存機能活用の原則
これは、高齢者が「できないこと」を探すのではなく、「できること」を評価して活かしていくという考え方です。これは、高齢者が自立した生活を送っていくためには非常に重要なことなのです。
この三原則で1は日本でも在宅介護の重要性も話題に上がってきていますが、2と3がデンマークとかなりの違いがあるように感じました。
2ではデンマークでは「自分が何をしたいか」を「 1 日の始めに」決めることが多く行われています。例えば、施設で働く介護士との会話は、「今日は何をしましょうか?」から始まるそうです。
対し、日本では本人の意思、家族の意思を確認したうえでケアマネがケアプランを決め、入浴日は月・木曜日…など、あらかじめプランが決められます。そのケアプラン作成の場には本人不在の場合も多くあります。
このように介護方針を決める際にもデンマークでは「自己決定」を重視し、日本ではケアプランというレールを敷き決められたルーチンで利用者さんの介護を行うというスタイルとでは介護する際の柔軟性に大きく差が出てくるのではないかと思います。
実際、利用者さんの言動から「今」プランにないけど「こういう介護を試してみたい」などを長上にその場で話してもその場では「GO」サインを貰えることは少なく「ケアマネと相談してからね」とレスポンスが悪く、数日経ってからケアマネから「GO」サインが出るころには遅すぎたという状況が多々あります。
1日の初めに利用者さんに何をしたいかを尋ねそれに合わせてプランを実行するやりかたは、私にはすごく魅力的に感じました。(もちろん、意思疎通の難しい方もいるので日本のスタイルも間違ってはいないと思っています。)
3については日本ではよくケアカンファやフロアミーティングで利用者さんの状況を話合う時に「最近立ち上がりが悪くなった」「徘徊が酷くなった」など状態悪化について議論することが殆どだと思います。こういった負の状態だけがフォーカスされて議論してしまうと、結果「立ち上がりが悪く転倒のリスクが増大したから車いすを利用して立ち上がりをしないように気を付ける」や「徘徊が酷くなって落ち着きがないのであれば薬の処方の検討」など安全を重視する方向性に議論が働き、結果自立支援とは程遠い抑制に近い介護が生まれてしまうと思います。
そうではなく、現在の利用者さんの出来ることを重視して例えば「最近フラツキはあるけど歩く意思が強く意欲がある」など前向きにとらえることで「歩く意思と意欲があるのであれば、フラツキし転倒リスクはあるが歩ける環境を整え、フラツキを軽減出来るよう下肢筋力の強化に努める」等のプランが上がりやすくなると思います。
私もユニット型特養で働いていた時は、よく職員に利用者さんの「出来ないとこ探し」をするのではなく「出来るところ探し」をして少しでも利用者さんの残存機能を使うようお願いしていました。
そうすることで、少しでも自立した生活を利用者さんに送って頂けると思っていたからです。
五感を刺激するデンマーク流認知症介護
具体的には、生活空間を記憶や五感に刺激を与えるモノで満たすことによって、高齢者に常に安心感を抱かせるというものです。
たとえば、昔の家具や調度品をそろえたり、トイレを旧式のものに変えることで、認知症の方が出来る限り認識しやすい環境を作り出すための内装面の工夫などがなされています。
また、馴染みのあるもの揃えたり、季節のものや収穫物など飾ることも効果があるそうです。
こういった懐かしいもので思い出を回想してもらったり、景色やにおい、触れることを通し、生活環境から五感を通じて「安心感」と「脳へのいい刺激」を高めていきます。
こういった取り組みは日本でも特にユニットケアを推進している特養では行われているのではないでしょうか? 私が働いていたユニット型特養ではどの施設でも行っていました。
まとめ
今回は本を読んで「日本の寝たきり老人は、ヨーロッパの8倍、アメリカの5倍といわれている」という内容から普段から介護について私が思っていることの一部をつらつらと書いてみました。
実際にデンマークの介護事情を見たことはないのですが、色々調べると「デンマークでは高齢者が自己決定をして残存能力を活かしながら、いきいきと生活を続けていっています。」といった内容の文献が多くあり日本でもこのような介護が提供出来るようになればいいのになって思っています。
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